離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました
「た、達樹さん?」
振り返らず声をかけると、達樹さんは「ん?」と言うだけでキスをやめようとはしない。
触れるだけだった唇が皮膚を吸い始め、両手で押さえる口元からは時折それらしい声が漏れてしまう。
胴に回されていた手が温かい温泉の中で肌を撫で、無防備な両胸を包み込んだ。
「あっ、達樹さん、だめ」
私の声に達樹さんが手を止めることはなく、口づけているうなじは強く吸い上げられる。
「あぁっ──」
痕がついただろうと思われるちりっとする痛みに体が震え、思わず顔を振り向かせた。
そこには、髪も肌も濡れた艶っぽい彼の微笑が。私の心臓はたちまち大きな音を立てる。
「達樹さん、もうっ」
胸に宛がわれた手を止めるように、達樹さんの腕に手を添える。
利き手が離れていったと思えば、顎を掴まれて今度は唇を奪われた。
私のことを熟知している舌がすぐに唇を割って入ってくる。
「っ、んっ……」
頭がぼんやりしてきたのは、温泉のせいなのか達樹さんに触れられているせいなのかもうよくわからない。
ただ抵抗する気持ちは薄れてきて、抗わず彼からの甘い悪戯に身を任せていた。