離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました


 達樹さんが帰国して、早一カ月──六月十日。

 東京も一昨日梅雨入り宣言がされ、今日は朝から弱い雨がしとしとと降り続いている。

 あっ君とは、この間と同じ場所でとPalm Coffeeで待ち合わせた。


「みのり、悪い、待たせたな」

「ううん、大丈夫。来たばかりだから」


 今日は私のほうが先にお店につき、この間と同じ窓際の席に場所を取って待っていた。


「この間はごめんね。話も聞けずに帰っちゃって」

「ああ、それはいいけど、あの後大丈夫だったのか?」

「あー、うん。大丈夫」


 本当は大丈夫じゃないかもしれない。

 あの日から早十日。

 達樹さんはあの後、【しばらく病院にいる】と、一度だけメッセージを送ってきた。

 それからマンションには帰宅していない。

 私の行動が達樹さんをそうさせてしまったと思うと、帰ってきてほしいとメッセージを送ることは自分の中で許されなかった。

< 135 / 145 >

この作品をシェア

pagetop