離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました
達樹さんが帰国して、早一カ月──六月十日。
東京も一昨日梅雨入り宣言がされ、今日は朝から弱い雨がしとしとと降り続いている。
あっ君とは、この間と同じ場所でとPalm Coffeeで待ち合わせた。
「みのり、悪い、待たせたな」
「ううん、大丈夫。来たばかりだから」
今日は私のほうが先にお店につき、この間と同じ窓際の席に場所を取って待っていた。
「この間はごめんね。話も聞けずに帰っちゃって」
「ああ、それはいいけど、あの後大丈夫だったのか?」
「あー、うん。大丈夫」
本当は大丈夫じゃないかもしれない。
あの日から早十日。
達樹さんはあの後、【しばらく病院にいる】と、一度だけメッセージを送ってきた。
それからマンションには帰宅していない。
私の行動が達樹さんをそうさせてしまったと思うと、帰ってきてほしいとメッセージを送ることは自分の中で許されなかった。