離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました


 長くて辛いだろうと当初思っていた一カ月はあっという間で、終わる日が近づくにつれ〝離婚〟という二文字は私の中で薄れていった。

 もしかしたらまた、きっかけとなったはじめの一年のように、彼といれば寂しい思いをすることがあるかもしれないという不安も少なからずあるのは確かだ。

 だけど、その心配よりも達樹さんと別れることのほうが遥かに寂しいと気づいた。

 私の人生から、彼が、達樹さんがいなくなることが寂しいのだ。


「ごめんね。私があんな相談してたから、心配させたね。でも、大丈夫だから」

「大丈夫って」

「ううん、大丈夫とかじゃない。彼と、達樹さんとこれからの人生歩めたらって、今は思ってるから」


 今心にある気持ちを全て吐き出しにこりと微笑むと、あっ君は「そっか」と小さく息をついた。


「そこまではっきり言われたんじゃ、俺の出る幕はねえな」

「あっ君……」

「だったら、もう弱音吐かずに突き進めよ」

「うん。わかってる」


 微笑みそう答えながら、結末はまだわからないと思う冷静な自分もいる。

 一カ月前、離婚したかった私と、離婚を拒んだ達樹さん。

 しかし一カ月経った今、離婚はやっぱりしたくないと気づいた私。

 だけど、達樹さんの今の気持ちはわからない。

 海外転勤をするあっ君を激励し別れた後、ひとりになってスマートフォンを取り出す。

 道の端で傘を差しながら、久しぶりに達樹さんへメッセージを送った。

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