離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました


 無我夢中で話を聞いてと言う彼女を無視して抱き、我に返ったときには目の前に意識を失いぐったりと横たわるみのりの姿があった。

 合わせる顔がない。

 勢いで破ってしまった離婚届はテープを貼って直した。

 提出する場合、破れたものでも直せば受理してもらえると、慌てて調べるとネット上に載っていた。

 今度こそ提出すると言われる覚悟で直した。

 一カ月の猶予をもらって少しずつ積み上げてきたものを、自らの至らなさで壊してしまった。

 その後悔に今も襲われ続けている。

 そして、今日はその約束の日だ。


「今日はこれから帰るのか?」

「さあな」


 いつまで逃げるつもりなのか。もう逃げ場はどこにもない。

 みのりに会って、この一カ月の結論を告げてもらう。

 泣いても笑っても、あとは受け入れるだけ。

 飲み終えた缶コーヒーを捨てようとしたとき、スクラブスーツのパンツのポケットに入れていたプライベートのスマートフォンが振動したことに気づく。

 取り出すと画面にみのりからのメッセージが表示されていて、一瞬鼓動が動きを停めたような感覚に陥った。

< 139 / 145 >

この作品をシェア

pagetop