離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました
epilogue


 久しぶりに送ったメッセージは、すぐに既読がついた。

 すぐに返ってきた返事は【了解】のひと言だけだったけど、応答してもらえたことにひとまずホッと安堵した。

 この間一緒にできなかった夕食のハンバーグ作り。

 最後になってしまうかもしれない今日、一緒にできたらという思いでお使いを頼んだ。

 最後になんてしたくない。

 一か月前の私が見たら、今の私の気持ちは間違いなく信じられないだろう。

 でも今は、今日で別れるなんてことは考えられないし、考えたくない。

 その可能性があることを考えたとき、空虚な気持ちに襲われて自然と涙が溢れかけた。

 空港まで行って騒いだ私が離婚を取りやめたいなんて言ったら、達樹さんはどう思うだろう。

 何を今更と、呆れるだろうか。

 それでも、あれから一カ月、私の気持ちがどう変わったのか、最後になろうとも達樹さんに伝えたい。

 テープで補修された離婚届を前にダイニングテーブルにひとりかけていると、玄関に人の気配を感じる。

椅子から立ち上がりその場に立ったまま、十日ぶりに会う達樹さんと対面した。

< 141 / 145 >

この作品をシェア

pagetop