離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました
心臓が尋常じゃない音を立てて鳴り響いている。
そのせいか呼吸もうまくできず、息が苦しい。
今まで生きてきてこんなにドキドキする経験なんてしたことがない。
これから自分にどんな展開が待っているのか、混乱する頭で必死に考えてみる。
ベッドの上でこれから始まろうとしていることを、私はフィクションの世界でしか知らない。もちろん私自身、未経験の処女なのだ。
このままいけば、服を脱がされて、彼もスーツを脱いで、それで、またキスとかして、それで、それで……。
乏しい想像力を張り巡らせていると、通話を終えた達樹さんがベッドへと戻ってきた。
無意識に彼に背を向け、留めきれていないブラウスの前を押さえる。
「どうやら神様はみのりの肩を持つようだな」
「え……?」
「オンコールだ。当直に欠員が出てる上に、首都高で大規模な事故があって手が足りないと緊急の連絡が入ってきた。俺が今日帰国したともう知っていたようだ」
かかってきた電話の要件は達樹さんを呼び出す病院からの連絡だったと知る。