離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました
『私はまともに恋愛したことがこの歳までありません。だから、こんな形の結婚でも、あなたと恋愛して心から愛したい』
それはどこか挑戦的にも聞こえ、切実な願いにも感じ取れた。
面と向かってそんなことを言った彼女に衝撃を受け、同時にこの縁談を進めようと決めていた。
その日から自然とみのりのことを考える時間が増えていったのを振り返ると、初めて会った見合いの日に彼女に落とされたということだ。
縁談を進めたいと申し出てから、婚姻まではあっという間に事が運んだ。
しかし、当時その頃、働きながら機会を窺っていた海外への研究留学の縁をもらい、話がまとまったタイミングでもあった。
新婚早々、妻を日本に置いてひとり海外に出るなんて、望ましくないかもしれない。
後ろ髪を引かれる思いで出国したことは、今でも鮮明に記憶の中に残っている。
結果、医師として着実にレベルアップとなる貴重な時間を送ることができた。
今後は自分だけのためではなく、一緒になったみのりのことも考えながら仕事にも向き合っていけばいい。
約一年ぶりに会える今日の日が近づくにつれ、やっと始められる彼女との新婚生活に期待を膨らませ帰国した。
しかし、再会を心待ちにして向かった到着ロビーで待っていたのは、離婚届を持ってサインしてくれと詰め寄るみのりだった。