離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました
実際、気が動転しそうだった。
でも、考えみればそれはやむを得ないことだと、みのりの立場になれば簡単にわかることだった。
待っていてくれる。
何を根拠にそう信じて疑いもしなかったのかは今となっては意味不明だけれど、なぜかそう信じて疑わなかった。
見合いをし婚約、婚姻を結んだにも関わらず、彼女にひとり離婚届を手にする決意をさせてしまった自分を心の中で激しく叱責した。
即サインをしてほしいというみのりに、今日のところは考え直してもらえないかと交渉して思い留まってもらったものの、この先彼女の気が変わることは相当難しいに違いない。
夫婦といえ、今はまだ書類上だけと言っても過言ではない。彼女から一線引かれている感じが、今日数時間一緒に過ごしてビンビン伝わってきたのを感じた。
過ぎてしまったことをいつまでも悔やんでも仕方ない。
それなら与えてもらった一か月間という猶予の中で、始めるはずだった新婚生活を取り戻す。
いや、それ以上のものを実現しなければ、みのりの気持ちを元通りにすることはできないだろう。