離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました
振り向くよりも先に鏡に上半身裸の達樹さんの姿が映り込んできて、振り返るに振り返れなくなってしまう。
鏡越しに見える逞しい裸体。
男性の裸なんて、テレビや映画の中でしかちゃんと見たことがない。
着衣の状態だと細身な体だと思っていた達樹さんだけど、胸筋や腹筋が鍛えられ、無駄な肉のない逞しい体の持ち主だと知る。
これは、日常それなりに努力していないときっと維持できない体型だ。
鏡越しに盗み見ているだけであっという間に鼓動は大きく鳴り始め、どんどん高鳴りを増していく。
バレないうちになんとか落ち着かせようと、広げていたメイク道具をポーチにしまっていたところ、突然背後から首元に腕を回して抱き締められた。
「ぅわっ」
懲りずに可愛らしさもないリアクションで驚いた私を、達樹さんはフッと笑い頭に唇を寄せる。
さっき編み込んだ部分に口付けを落とした。
平静を取り戻そうとしていたところで急接近されてしまい、ドッドッと鼓動は逆に暴走する。
鏡の中でバックハグをされている自分を見ていると、その顔はみるみるうちに真っ赤に染まっていった。