離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました
私たちの他に利用客の姿はなく、貸し切り状態。
都心の街並みを見渡す絶景を目の前に、食べたいものは用意されているものを自分で取っていただいていいというバイキング形式だ。
料理はどれも一口大の上品でオシャレな食べやすそうなものばかり。
私はその中で美味しそうなパンや色とりどりのフルーツが目に留まる。
表のスタッフは制服を身につけた女性がひとりいるだけで、席を案内すると「ごゆっくりどうぞ」とすぐに引っ込んでしまった。
気になったものを控え目にプレートに取り席につく。
先に席に戻っていた達樹さんは戻ってきた私と入れ替わるように立ち上がり、「何を飲む?」と訊いた。
「あ、じゃあオレンジジュースにします」
そばのカウンターにドリンクも種類豊富に用意されている。
といっても、よくあるファミレスのドリンクバーとは違い、ジュース類は生絞りフレッシュジュースが並び、コーヒーは見たことのないエスプレッソマシンが抽出する。
達樹さんはお願いした通りオレンジジュースを私の前に置き、自分にはコーヒーを一杯取ってきた。
外を眺めるような横並びの席にふたりがつき、「いただきます」と食事を始める。
すっかり昇ってきた太陽に照らされ、ビル群のガラスがキラキラと反射して見える。
果肉の入った濃いオレンジジュースはすごく美味しくて、体にビタミンが染み渡っていく感じがする。
ちらりと横の達樹さんに目を向けると、コーヒーカップを持ったまま、ぼんやりとガラスの向こうをじっと見つめていた。