離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました
「大丈夫……ですか?」
私からの声掛けで動き出したように、達樹さんはカップに口をつける。
「ああ、大丈夫」
「相当お疲れですよね。帰国後すぐにお仕事に向かわれたんですから」
時差もあるし、機内では少し休んだのだろうか?
昨日は離婚届を書いてもらうために会うだけのつもりでいたから、そんなことまで気が回らなかった。
「ベッドの上にいても、みのりを抱いて一晩起きていただろうから一緒のことだ」
「……!?」
「むしろ、そっちの方が疲れてたかもな」
「なっ、何言ってるんですか!」
上品な空間に私の場違いな声が上がる。
ハッとしたけれど、他に誰もいなかったのが幸いだ。
「もうっ……」
「まぁ、冗談はそのくらいにして、本当に大丈夫だ。あとで少し眠れば復活する」
「事故……ニュース記事で見ました。あの、搬送された方たちは」
「重傷者もいたが、命に別状はなかった」
そう聞いて、ホッと胸に安堵が広がる。
大規模な事故だったみたいだから、もしかしたら命を落とした人もいたのではないかと思っていた。