離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました


「お義父さんの病院の手伝いは変わらず続けているのか?」

「あ、はい。週三日は必ず」


 医学の道に進まなかった私は、エスカレーター式で上がった短大を卒業後、医療事務の資格を取り実家の病院の手伝いに入った。

 その他の平日二日は料理教室と華道茶道を習いに行き、将来のための花嫁修業に時間を費やした。


「あ……言いそびれちゃってましたけど、ご実家の病院のほうからうちを紹介されたと来院される患者さんが定期的にいらしていて。いつもありがとうございます」


 達樹さんのご実家は関東と関西に総合病院を持っていて、現在はその統括を達樹さんのお父様がされている。

 達樹さんには同じ医師のお兄様もいて、今は関西のほうの病院長をしているとも聞いているけれど、いずれ次男の達樹さんもお兄様と一緒に自分の家の病院を継ぐことになるのかもしれない。

 私と結婚したことで、達樹さんのお父様がうちの小さな医院のことも気に掛けてくれていることを、この一年の間に何度も目にしてきている。

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