離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました
「そうか。うちで診るよりも、お義父さんのほうの病院で経過を診たほうが患者のためにもいいという判断で紹介しているだろうから、気にしなくていい」
「はい。でも、父もありがたいと常々言っているので。私からもお礼を言いたくて」
「それなら、この結婚にも意味があったってことだな」
達樹さんはそう言って席を立ち上がり、二杯目のコーヒーを取りにいってしまう。
結婚した私たち当人の関係は、離れていたことで何も始まらずに時だけが流れていってしまった。
でも、婚姻を結んだことでいい方向に動き出していることも実際にはあると、私自身も知っているしわかっている。
軽い気持ちで昨日の行動を起こしたわけではないけれど、ふと、周囲のことまで深く慎重に考えていたかと自問自答していた。