離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました
食事を終え部屋へと戻り、十時過ぎにはホテルからタクシーに乗り込んだ。
目指す先は、一年前に一緒に住む予定で用意されたマンションの部屋。
達樹さんが海外に行っている間、私はほとんどの日を実家で寝起きしていた。
広いマンションでひとり過ごすのは寂しすぎるし、より新婚なのに孤独だということを実感してしまうからだ。
実家の両親も事情が事情だけに、私が結婚前と変わらず実家に居ついていることを咎めたりはしなかった。
ふと窓の外からとなりの達樹さんに目を向けると、シートに体を預け静かに目を瞑っていた。
帰国して大して休まず、一晩気を抜けない仕事をしてきたのだ。
相当疲れているし、本当なら泥のように眠りたいはず。
このまま寝かせておいてあげたいと思うのに、無情にもタクシーはマンション前に到着してしまう。
しかし、達樹さんは起こされなくてもすっと目を開き、カードで支払いを済ませタクシーを降車した。
あとに続いて降車すると、自然な感じですっと手を差し出された。