離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました
「本当なら、昨日で俺との関係は終わってるはずだったんだもんな」
「そう、ですね……」
もしそうなっていたら、このマンションは住まわれることなく人手に渡っていたのだろう。
ここに来てみて、そんなことをなんとなく考えていた。
達樹さんが荷物を置きに自室に入っている間、キッチンに向かい冷蔵庫を開ける。
「……って、何も入ってるわけないんだけど」
ここで生活をしていたことはほぼないわけで、開いた大きな冷蔵庫の中身はほぼ空っぽ。
いつだかここでひとり映画を観た時に飲もうと買ってきた、外国産のビールの瓶が二本入っているだけだった。
一か月、ここで住むことになるなら買い出しに行ってこないとだよね。
調味料から揃えないとだから、結構な買い物になっちゃいそうだけど、初回は仕方ない。
「みのり」
「あっ、はい」
開けっ放しの冷蔵庫の中を見つめていると、いつの間にかキッチンの入り口に達樹さんが立っていた。
Tシャツにルームパンツに着替え、やっとゆっくり休める格好になっている。