離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました
「っ……! ちょ、外なのに」
「こういうのも全部、初体験ってことだろ?」
達樹さんは「堪らないな」なんて、端整な顔に意地悪な笑みを浮かべる。
「そうですよ……キスだって、昨日初めてだったし……」
ごにょごにょと語尾に向かって言葉を濁す私を、達樹さんはフッと笑う。
「全部初めてなら、どれも全て最高の思い出として残してやりたいって思ってる」
「さ、最高の思い出って、昨日の空港での不意打ちのは、あれは酷かったです! 初めて、だったのに……」
話の流れに乗って、ここぞとばかりに抗議する。でも、その後半はやっぱりあの時の情景が頭に浮かんで言葉尻が弱くなる。
「みのりには、ファーストキスの理想の形があったってことか。どんなの」
文句を受けても、達樹さんにダメージを受けた様子は微塵もない。むしろ、興味津々な様子で問いかける。
「どんなのって、もっと……丁寧なのというか」
「丁寧、ね……」
「と、とにかく! あんな噛みつくみたいなのがファーストキスだったなんて、衝撃的すぎて忘れられないです!」
よし、言ってやった!
そう思ったものの、見上げた達樹さんは口角を吊り上げ肩を揺らす。