離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました


「な、何がおかしいんですか!?」

「いや、ある意味忘れられない初めてになったんだなって思っただけ」


 ひ、酷い……!


「もうっ、そうやって簡単に片づけないでください!」


 怒っているんだとアピールするために、繋いでいる手を振りほどきひとり砂浜を歩いていく。

 だけどすぐに「こら、待て」と離した手を掴まれ、横に並ばれてしまった。


「ごめん、怒るなよ」

「怒ります!」

「どうしたら機嫌直す?」

「……何か美味しいもの食べたいです。お腹空きました」


 少し前からお腹が空いてきたと思っていて、腹の虫が鳴きだしてもおかしくない状態になっている。

 素直にそう言うと、達樹さんは「何だそれ、可愛いな」なんて笑った。


「じゃあ、何か食べてから帰るか」


 今度は達樹さんが主導権を握り、夜の海を手を引き歩いていった。

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