離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました
お腹が空いたという私の一声で、達樹さんはその後、海沿いの雰囲気のいいカジュアルなフレンチレストランに連れていってくれた。
食事を終え、再び車を走らせ都内のマンションに戻ってきたのは午後九時過ぎ。
達樹さんが開けてくれた玄関のドアを入ったところで、そういえばと冷蔵庫の中身を思い出した。
「あ、冷蔵庫の中身が空っぽだったので、買い物をしてくればよかっ、きゃっ──」
背後から突然達樹さんの両手に捕まって、話していた声が吹き飛ばされるように遮られる。
ぎゅっと抱きしめられ驚いてその場で固まると、背の高い達樹さんが後ろから包み込むように私の耳元に唇を寄せた。
「それは、また日を改めて」
鼓膜を震わせる近さで囁かれて、それだけで鼓動が早鐘を打ち始める。
「え、でも──」
今度は達樹さんが私を抱き上げたことで、私の声は再び中断する。
「達樹さんっ!?」