離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました
私のパンプスを床に置いた達樹さんは、身に着けているジャケットを脱ぐと、私へと振り返りベッドへと上がってくる。
ベッドに両手をついて体を起こしていたのに、接近した達樹さんから逃れるように自らベッドに背中を沈めてしまった。
一面に天井が広がる視界の中、端整な達樹さんの顔が私を見下ろすように入ってくる。
さらりと艶のある前髪が揺れて落ちるのを見つめながら、痛いほど高鳴っていく鼓動に両手で胸を押さえる。
「達樹、さん……?」
なんと声をかけたらいいのかもわからない。
私を見下ろす達樹さんはわずかに口角を上げ「ん?」と微笑する。
その微笑みが近づいてきた気がしたときは、唇を柔らかい感触が包み込んでいた。
「っ……っん」
それはこれまでで一番優しい口づけだった。
触れたまま深くを探ることもなく、ふにふにと唇の柔らかさを確かめる。
微かに離れ角度を変えると、またそっと触れ合った。
頬に添えられていた手が顎のラインをなぞり、首筋に下りていく。
親指が鎖骨を撫でると、自然と肩がぴくりと震えた。