離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました
うちは祖父の代から内科医で、地域密着型の小さな病院を持っている。
今は父が跡を継いで診療を行っているけれど、そのクリニックが近年経営難に陥っていた。
近隣に医療テナントのビルが建ち、患者さんが流れてしまったのだ。
内科小児科に加え、耳鼻科や皮膚科、眼科に歯科。ビル内で他診療も必要な場合紹介してもらうことができると評判で、綺麗で新しい病院のため特に若い世代には受けがいい。
うちの病院は新患に至ってはほとんど獲得できなくなり、古くからの年配の患者さんが来院してくれることで生き残れているような状態になっていた。
そんな状態のクリニックを危惧した父親が、古い友人だという人の息子と私をお見合いさせることにしたのだ。
相手は、関東と関西に総合病院を持つ、うちとは違う大病院の跡取り息子。
本人ももちろん医師として現場に立つ外傷外科医だと聞かされていた。
うちは私が一人娘ということもあり、私が跡を継がなければ父の代で廃業することになる。
父親が私に医大へ進むことを強く希望しなかったこともあり、私は病院を引き継ぐという選択を取らなかった。
しかし、病院の経営悪化が深刻になってくると、病院が廃業に追い込まれていく現状に父親は焦りを見せ始めた。
それならいっそのこと、信頼の置ける相手に病院を継承したい。
その強い希望で、お見合いという話が進んだ。