離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました
「はいはーい、あっ君? どうかした?」
『おう、今大丈夫か?』
電話の向こうは少しざわざわして聞こえる。
時間的に、仕事終わりとかだろうか。まだ仕事の途中というのも考えられるけど。
「うん、平気だけど」
『そっか。いや、あの後どうなったかなって思って。うまく手続きは踏めたのかと思ってさ』
「あ……」
離婚を考えていることを相談していて、最後に会った日は今からその申し出に行くからと言っていたのだ。
無事に離婚の手続きを踏めたかと気になるのは当たり前のこと。
「それが……まだなんだよね」
そう言うと、電話の向こうからは『えっ?』と訳がわからないという心情がありありとわかる声が返ってくる。
『まだって、なんで』
「うん……」
なんと説明したらいいのだろう。
いつも自分のことのように親身になってくれるあっ君に、余計な心配はかけたくない。
でも、変に嘘はつけない。