離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました


「一方的に離婚したいと言われても困るって……それで、少し冷静になって考えてほしいって」

『冷静になってって、みのりがどれだけ悩んで決断したことか、相手はわかってんのかよ』


 電話の向こうのあっ君の声は、どこか険しさを増してくる。

 うまく離婚できなかったことで、やはり心配をさせてしまったようだ。

 嘘をつくのもよくないと思って正直に話したけれど、それはそれで結局心配をさせてしまった。


「うん。でも、大丈夫。もう離婚届も書いてもらってるし、話がまとまれば提出する感じだから」

『そうか。まぁ、何かあればいつでも連絡してこいよ』

「うん。ごめんね、心配かけて」


 そんな話をしていると、玄関のほうから達樹さんが帰宅した気配を感じる。


「あ、じゃあ、また連絡するから。ごめんね、切るね」

『お、おう、またな』


 通話を終わらせ部屋を出ていくと、玄関を上がってきた達樹さんとドアの前でばったり出くわした。

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