離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました


 夕食を終え、各々にバスルームで一日の疲れを取り除いてくると、時刻は九時少し前だった。

 私が紅茶を淹れている間、達樹さんが映画の準備をしてくれている。


「達樹さん、ケーキどれ食べます? くま? うさぎ?」


 お土産に買ってきてくれた箱の中を覗きながら達樹さんに質問する。


「俺はいいよ。みのりの夕飯食べ過ぎたから、明日にしておく。みのりが好きなの食べたらいい」

「え、そうなんですか? うーん、どれにしよう……。じゃあ、うさぎにしよう」


 箱の中から慎重にうさぎのケーキを取り出す。

 ドーム形のケーキ表面はピンク色のクリームに覆われ、うさぎの耳や顔はチョコレートで表現されている。

 可愛くてフォークを入れるのが若干心苦しい愛くるしい表情だ。

 どのケーキも可愛いから、これを達樹さんがパティスリーで選んで注文してきた姿を想像すると、なんとも微笑ましくてひとりクスッと笑ってしまう。

 でも、私のために買いに行ってくれたわけで、その気持ちがやっぱりすごく嬉しい。

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