離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました


「お待たせしました」


 紅茶と自分のケーキをトレイに持ってリビングのソファに向かう。

 ローテーブルにそれらを置くと、達樹さんに手首を引かれた。

 ソファにかける達樹さんのとなりに招かれ、自然な動きで彼の腕が腰に回される。

 引き寄せるように体が密着すると、達樹さんはリモコン操作で映画をスタートさせた。

 観ようと約束していた映画は、話題になった海外のミステリー作品だった。

 だんだん入り込んで没頭しそうだから、序盤にケーキをいただこうとお皿を手に取る。


「ごめんね……切るね」


 愛くるしいうさぎに向かってそう断りをいれてフォークを刺していると、横からクスクスと笑われる。


「ケーキに話しかけてる」

「え、だって、なんか可哀想じゃないですか。こんな可愛い顔してるのに」

「そう? 断り入れてるみのりのほうがよっぽど可愛いけど」

「ぐっ」


 そう来るとは思ってもなくて、可愛いの言葉に反応してしまう。

 うさぎの顔にフォークを刺したままという結構残酷な状態で、じっと達樹さんの顔を見つめる。

 静止状態の私の手からフォークを抜き取り、達樹さんは私の口にケーキを運ぶ。


「えっ?」

「はい、あーん」

「え、あ、はい……」


 あーんとか、この私がしてもらう日がくるなんて……!

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