離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました
口を開けて食べさせてもらうことがこんなに恥ずかしいなんて知りもしなかった。
その恥ずかしいという気持ちが大きく働いたせいで開口が小さくなり、フォークに載ってきたケーキをきれいに口に招き入れれず。
「ほら、もっと大きく開けないと。口の横についただろ」
「あ、すみません」
フォークの代わりに今度は達樹さんの指先が近づいてきて、人差し指が口の周りについたクリームを拭いとる。
達樹さんは「どれ、味見」と、私の口もとから取り除いたケーキのクリームを自分の口にぺろりと入れる。
その仕草に鼓動がトクンと音を立てた。
「ん、うまい」
クリームを舐めただけなのに、私の口元から取り除いたというおまけが付いただけでなぜだか艶っぽく達樹さんの姿が目に映る。
「すみません、ありがとう」
誤魔化すように手もとのケーキに視線を落とし、すっかり顔が割れてしまったケーキにもう躊躇なくフォークを入れた。