離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました
ケーキを食べ終えると、紅茶を少し飲み、ソファに深く腰をかけた。
私が座り直すと達樹さんは背もたれに腕を載せ、私の頭にそっと触れる。
寝かしつけるような優しい手つきでふわふわと髪を撫でられ、研ぎ澄まされた意識がその部分に集中していく。
本来なら、こんな風に触られたらうとうとしてくるものなのかもしれない。猫なんかだとそんなイメージだ。
だけど、私にそんな余裕はなく、むしろ鼓動は高鳴りを増していくばかり。
達樹さんに触れられることで、観ている映画にも段々集中できなくなってくる。
「っ……」
と、そんなとき、側頭部の辺りを撫でていた達樹さんの指先が耳の縁をすっと掠めて、ついびくりと肩を揺らしてしまった。
「あ、すみません」
そんなに驚くのは失礼だろうと謝った私を、達樹さんが横から覗き込む。
顔を向けて目が合ったときには、接近した達樹さんに押し当てるようにして唇を塞がれていた。
「──っ……た、つきさん」
唇がわずかに離れた隙に名前を口にする。
近距離で見つめ合うと、達樹さんは黙って私を自分の脚の間に座らせた。
後ろから抱きしめられる形で腕を回され、ますます流れている映画の内容が頭に入ってこなくなる。