離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました
【今晩は何時ごろ帰宅されますか?】
短いメッセージは開くことなく通知だけでわかる内容だが、そのままタップして返信を打ち込む画面を開いた。
今日も昨日と同じくらいに帰宅すると返信すると、すぐに既読がつく。
そして、数十秒でその返事が届いた。
【わかりました。昨日買ってきてくれたケーキ、達樹さんまだ食べてないので今日は食べてくださいね。もったいないです!】
なんてことのない返信だけど、読んでひとりフッと笑みをこぼす。
昨晩のケーキに向かって話しかけている姿がふと思い出され、口元を手で覆った。
離婚届を突き付けられたあの日から、早くも一週間が過ぎ去った。
離婚するというのを取り下げてもらうため、俺には一カ月という限られた時間の中でみのりの心を取り戻さなければならない。
一カ月なんてあっという間だ。
ぼうっとしていればすぐに過ぎるほど刹那だろう。
離れた気持ちを取り戻してみせると啖呵を切ったけれど、何か絶対的な自信があったというわけではない。
むしろ、答えはなく手探り状態で彼女との日々を過ごしている。
みのりの行きたいところ、やりたいこと、結婚後離れて叶えられなかったことを今ひとつずつ叶えているだけだ。
こんなことで本当に彼女の気持ちを変えられるのかは、正直全くわからない。
もしかしたら全て無意味かもしれないけれど、今の俺にはこんなことしかできない。