離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました
「結婚後すぐに留学に出たから、実は結婚はしてないんじゃないかって騒がれてるとも当時聞いたからな。そんな噂が出るくらい、お前の結婚を残念がってる女性陣がいるってことだ」
「なんだそれ」
「だから、今のお前の噂は聞くに堪えないだろうな」
こんな話をみのりが聞いたら、確実に憤慨するに違いない。
『結婚直後に一年も離れるなんて有り得ないから、そんな噂が立つんです!』
とか……絶対に言われるに違いない。
「それなら、引き続きそんな噂は流れてて構わないな。おかげ様で仲良くやってる」
「お。じゃあ俺がさりげなく流しておくわ」
そんな話をしていると、今度は院内用のスマートフォンが着信する。
「はい、曽我」
『曽我先生、五分以内搬送です。三歳男児、広範囲熱傷です。お願いします』
「了解、今向かう」
大して読めなかった論文をそのままにパソコンを閉じる。
先に医局を出ていった久世の後を追いかけるように席を立ち上がった。