「君は運命の相手じゃない」と捨てられました。
ルルーシュが帰った夜。夕食の席でライラはとても嬉しそうに言った。

「お父様、私ルルーシュ様と結婚します」

決定事項のようにあまりにも堂々とライラが言うので私は思わずお茶を吹き出しそうになった。

令嬢の根性で何とか飲み込んだけど。

「レドモンド君と?そう言えば今日うちに来ていたそうだな」

「はい!彼は私の運命の相手です」

「あら。素敵じゃない。ライラ、あなたは私の娘。とても特別な娘なのよ。だからきっと先方も喜ばれるわ」

と、義母は当たり前のように言う。ライラも義母の言葉に何の疑問も持たずに「はい」と頷いた。

精霊って確かに希少種ではあるし、魔力も高いから人によっては契約を結びたがったりするけど存在自体が特別ってわけじゃないんだけど。

異界の住人だからか、人と精霊の間で子は成せないと思われていたから精霊の血を引く彼女たちは更に珍しくはある。

でもそれって珍獣って意味合いに近いと思うんだけど。

「見た目に反して随分と神経が太いのね。昼間あれ程、ルルーシュに邪険にされていたのに。まさか婚約が成立すると思っているの?」

私が小馬鹿にしたように言うとライラは悲しい表情を作り、父は私を睨みつける。

義母は困ったような顔をして私を見る。

まるで血の繋がっていない私の扱いに困っている母の顔をするのだ。

でも自分たちは特別な存在と言うような人だ。きっとその顔も演技なんだろう。

「お姉様、私とルルーシュ様が運命の赤い糸で繋がれてるからって嫉妬は止めてください」

ほろりと涙を流すライラ。

昼間の出来事がまるでなかったかのようだ。私はちらりとライラの後ろに控えている侍女、キャサリンを見た。

キャサリンは唖然としていた。信じられないものを見るようにライラを見る。

良かった。

昼間の出来事は現実にあったようだ。

「セイレーン、お前は妹の幸せを願うこともできないのか」

厳しく叱責する父に私は怒鳴り散らしたくなった。

けれど私は淑女。

ぶん殴ってやりたいけどそんなはしたない真似はしない。

ナプキンで口を拭い席を立つ。食事には殆ど手をつけていないけど食欲など、とうに失せている。

「あなたにだけは言われたくありませんね。母はあなたのせいで死んだ。あなたが殺したようなもの。自分の幸せしか頭にないくせに、私にそれを説こうとしないでください。気分が悪いので失礼します」

「お姉様!」

背を向け出ていこうとする私を止めるようにライラが大きな音を立てて席を立つ。

「お父様は悪くないんです。ただ私たちを深く愛してくれていただけで」

「愛されなかった私の母が悪いと?」

「ちが、ただ」

傷つき涙するライラ。

分かっていないのね。たとえ演技であったとしても傷つく資格も涙を流す資格もあなた達にはないのよ。

「父だけではないわ。あなた達も私の母を殺した、人殺しよ」

私はそう言って部屋を出て行った。
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