どうしているの?ねぇ、先輩…
「怒んなって。仕方ねぇじゃん、むかついたんだから」
「むかつかれるようなこと、なにもしてない」
「してなくてもむかつくんだよ」
「勝手にむかつかないでよ」
「……」
雨の中、急に章くんの声が聞こえなくなったから振り向いたら……
雨の奥の黒い目が、じっと私を見据えていた。
やだ、この目、苦手。逃げたくなる……
「昔から言ってんじゃん。好きだって」
ほら、その目になると、この繰り返し。
「……昔から断ってるじゃん。ごめんって」
何度も……何度も何度も、章くんに伝えられてきた気持ち。
応えられなくて、何度も何度も断って……
だけど今まで、章くんの気持ちが揺れることは決してなかった。
恋を知らない私には、その気持ちは重すぎる。
「好きになんなよ、あの先輩のこと」
「……」
「俺のこと、好きじゃなくてもいいから。頼むから……誰のことも好きになんな」
「っ……」
そんな顔をするくらいなら、やめればいいのに。
違う恋を、見つければいいのに。
わからない。
私にはわからないよ……
「生徒会、頑張れよ」
「……」
「じゃーな」
ねぇなんで。
悲しい恋を、手放さないの……