どうしているの?ねぇ、先輩…



「……先輩は、どんな風に過ごしていたんですか?」


答えに詰まって、聞き返してみた。

先輩の、あれからのことを……


「俺は高校卒業して、今は大学行ってる。新しい出会いも沢山あったけど、ごっつとか洋平とか西沢さんとか、あと直人とも相変わらずつるんでるよ」

「、…」


懐かしい名前が沢山出てきて、それだけで泣きそうになった。

だけど泣きそうになった理由はもう1つ。


新しい出会い。

今日の全てが夢じゃないのなら、先輩を訪ねてきたあの人も夢じゃない。


新しい出会い。

先輩は、あの人と今の現実を生きているんだ……


「どんなこと、……考えてたんですか?」

「……」

「高校を卒業して、新しい出会いが沢山あって、……それで」

「……」

「先輩は、どんなことを考えて過ごしてきたんですか…?」


聞かれた質問の最後の問いを聞き返したら、タクシーの中で初めて目が合った。

数秒間合っていた目はすぐに逸らされて、私の視線はまた膝を見る。



「いつも、あれからずっと…」

「……」

「美香のことばっか考えてた」

「、…」



先輩がそう言ったほんの数十秒後、タクシーは家の前で止まった。

なんとなく別れ難い会話を最後に、こんなタイミングでお別れの時間……


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