Pierrot

「コスプレ喫茶だし、明るい雰囲気になる方がいいよね」

店内を想像しつつ、用意したテーブルたちを詩音は見つめる。そして衣装や看板の進み具合を見に行くと、颯しかいなかった。黙々と看板を作っている。

「奈良くん、他の人たちは？」

嫌な予感がしつつ、詩音は訊ねる。案の定返ってきたのは、「もうみんな帰ったよ」という返事だった。詩音は気持ちをグッと堪え、「なら、他の人のぶんまで頑張らないとね！」と笑って作業に取り掛かる。

「奈良くんは何のコスプレをするの？」

「鬼滅の刃の冨岡義勇にしたよ。水沢さんは？」

「あたしも鬼滅の刃なんだ！我妻善逸！鬼滅の刃のコスプレ多いよね〜。友達もみんな禰󠄀豆子とか胡蝶しのぶとか言ってたよ」

「男子も鬼滅のコスプレするって張り切ってる人、結構いる」

そんなことを話しながら作業を進めていく。外はもう暗い。きっと肌寒いだろう。想像しただけでため息が出てしまいそうだ。