強盗返し
「私は恐る恐る小さい宇宙人を抱えてみたわ。
触れると肌はツルツルしていて、ひんやりしていたわ。もぞもぞと動く小さい宇宙人を抱えたまま、今度は大きい方に視線を向けたの。大きい方は頭らしきところから何か流れていて、小刻みに体を震わせていた。私はその様子をしばらく観察していたけど、そのうち大きい方の宇宙人の体の震えが治まり、ピクリとも動かなくなったの。その直後に私の腕の中にいる小さな宇宙人が耳をつんざくような声で鳴くだけだったわまるで仲間の死を悲しんでいるようだったわ」
「それならその小さな宇宙人はどうしたの?」
「家に持って帰ってお世話をしたわ。最初は大変だったのよ。何が食べられるか分からないし、奇声を上げて何か訴えるのだけど、どうしていいかも分からない。でも何年か経つとね、宇宙人が環境に順応してきたの。まるで狼に育てられた人間の子供みたいにね。それからは意思疎通も出来て、今では仲良く暮らしているわ」
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