狂おしいほどに君を愛している
10.追放
「どうして。私はスカーレットの母親なのよっ!どうして私が追い出されなきゃいけないのよ」
母に虐待されているとノルウェンにバレてから一週間後、母が公爵家を追い出された。
「オルガの心臓を持った娘を生んでくれたことは感謝する」
父が忌々し気に母を睨みつける。
「これはその報酬だ」
父が母に渡したのは慎ましく暮らせば一生食うに困らないだけのお金と今まで母が買っていた宝石とドレスだ。
小さいけど邸も与えるみたい。
これなら寝るところも食べ物に困ることもないだろう。
でもどうして急にこんなことになったのだろう。
今までの人生では一度もなかった。
「嘘よね、私を追い出すなんて。わ、私はスカーレットの母親よ。スカーレットには私が必要よ」
「お前がいなくてもスカーレットは生きていける。お前がいない分、のびやかに育つかもな」
エヴァンが皮肉気に言うと母はエヴァンを睨みつけた。
愚かな人だ。
父に捨てられた母はただの平民にすぎない。
公爵家の息子であるエヴァンを睨みつけるということは不敬罪で切り捨てられても文句は言えない。もう今までの様には振る舞えないのだ。
「もう二度と公爵家に関わるな」
それだけを言って父は邸の中に入っていった。
「スカーレット、お前だけは私を見捨てないわよね」
母の縋るような目が私に纏わりつく。
私が助けを求めた時、母が私を助けたことはなかった。それなのにどうして私が母を助けると思えるのだろうか。
「スカーレット、お前は私の娘でしょう。誰のおかげで今の生活ができていると思っているのっ!」
無反応な私にい苛立った母が声を荒げた。
「さぁ。公爵様のおかげでしょうか」
「何ですって」
「食事代もドレス代もあなたから出ているわけではないので」
「ぶはっ。確かにそうだわな」
エヴァンがお腹を抱えて笑い出す。母は頬を赤くして立ち上がる。
ぎりっと奥歯を噛み締め、ずかずかと私に近寄って来る。
私を殴るつもりなのだろう。
「ぐはっ」
「!?」
私に近づいていた母が後ろに吹っ飛んだ。私の横から足が出ていた。
「兄さん、足癖悪いよ」
くいっと眼鏡を上げながら棒読みでノルウェンが言う。
エヴァンが母のお腹を蹴っ飛ばしたのだ。
「羽虫が飛んで来たんでついな」
「ああ、兄さんは虫が苦手だったね。ということで、さっさとこの女を邸の外に追い出してくれる」
「は、はいっ」
ノルウェンに命じられて傍に控えていた護衛がすぐに母を邸の外に追い出した。母はずっとぎゃあぎゃあ喚いていた。
「スカーレット、中に入るよ」
「‥‥‥なぜ、急に追い出したの?」
私の質問にエヴァンは深いそうに眉間に皴を寄せた。
「何だよ。暴力を振るわれ続けた方が良かったって言いたいのか?」
「そういうわけじゃない。でも、別にあなた達には関係ないでしょう。暴力を振るわれているのは私で、あなた達じゃないんだから」
「全く関係ないわけじゃない」
私の言葉にエヴァンはバツの悪そうな顔をして視線をそらした。ノルウェンはなぜか少し傷ついた顔をしていた。
「私たちの妹だ。ずっとスカーレットの痛みに気づいてあげられなくてごめんね。君が暴れる度、君が誰かを怒鳴る度、私たちは君もあの女と同じだと思っていたんだ。君の主張を聞きもせずに勝手に思い込んで、勝手に判断してごめんね。今まで辛かったよね。でもこれからは守るから」
どうして今更そんなことを言うの。
四回の人生の中で私と彼らが打ち解けたことはなかった。
彼らにとって私はオルガの心臓を奪った悪人で、公爵家の害悪。
私が死んで喜ぶことはあっても悲しむことはなかった。ずっとそうだったじゃない。
どうして今までと違ってくるの。
母に虐待されているとノルウェンにバレてから一週間後、母が公爵家を追い出された。
「オルガの心臓を持った娘を生んでくれたことは感謝する」
父が忌々し気に母を睨みつける。
「これはその報酬だ」
父が母に渡したのは慎ましく暮らせば一生食うに困らないだけのお金と今まで母が買っていた宝石とドレスだ。
小さいけど邸も与えるみたい。
これなら寝るところも食べ物に困ることもないだろう。
でもどうして急にこんなことになったのだろう。
今までの人生では一度もなかった。
「嘘よね、私を追い出すなんて。わ、私はスカーレットの母親よ。スカーレットには私が必要よ」
「お前がいなくてもスカーレットは生きていける。お前がいない分、のびやかに育つかもな」
エヴァンが皮肉気に言うと母はエヴァンを睨みつけた。
愚かな人だ。
父に捨てられた母はただの平民にすぎない。
公爵家の息子であるエヴァンを睨みつけるということは不敬罪で切り捨てられても文句は言えない。もう今までの様には振る舞えないのだ。
「もう二度と公爵家に関わるな」
それだけを言って父は邸の中に入っていった。
「スカーレット、お前だけは私を見捨てないわよね」
母の縋るような目が私に纏わりつく。
私が助けを求めた時、母が私を助けたことはなかった。それなのにどうして私が母を助けると思えるのだろうか。
「スカーレット、お前は私の娘でしょう。誰のおかげで今の生活ができていると思っているのっ!」
無反応な私にい苛立った母が声を荒げた。
「さぁ。公爵様のおかげでしょうか」
「何ですって」
「食事代もドレス代もあなたから出ているわけではないので」
「ぶはっ。確かにそうだわな」
エヴァンがお腹を抱えて笑い出す。母は頬を赤くして立ち上がる。
ぎりっと奥歯を噛み締め、ずかずかと私に近寄って来る。
私を殴るつもりなのだろう。
「ぐはっ」
「!?」
私に近づいていた母が後ろに吹っ飛んだ。私の横から足が出ていた。
「兄さん、足癖悪いよ」
くいっと眼鏡を上げながら棒読みでノルウェンが言う。
エヴァンが母のお腹を蹴っ飛ばしたのだ。
「羽虫が飛んで来たんでついな」
「ああ、兄さんは虫が苦手だったね。ということで、さっさとこの女を邸の外に追い出してくれる」
「は、はいっ」
ノルウェンに命じられて傍に控えていた護衛がすぐに母を邸の外に追い出した。母はずっとぎゃあぎゃあ喚いていた。
「スカーレット、中に入るよ」
「‥‥‥なぜ、急に追い出したの?」
私の質問にエヴァンは深いそうに眉間に皴を寄せた。
「何だよ。暴力を振るわれ続けた方が良かったって言いたいのか?」
「そういうわけじゃない。でも、別にあなた達には関係ないでしょう。暴力を振るわれているのは私で、あなた達じゃないんだから」
「全く関係ないわけじゃない」
私の言葉にエヴァンはバツの悪そうな顔をして視線をそらした。ノルウェンはなぜか少し傷ついた顔をしていた。
「私たちの妹だ。ずっとスカーレットの痛みに気づいてあげられなくてごめんね。君が暴れる度、君が誰かを怒鳴る度、私たちは君もあの女と同じだと思っていたんだ。君の主張を聞きもせずに勝手に思い込んで、勝手に判断してごめんね。今まで辛かったよね。でもこれからは守るから」
どうして今更そんなことを言うの。
四回の人生の中で私と彼らが打ち解けたことはなかった。
彼らにとって私はオルガの心臓を奪った悪人で、公爵家の害悪。
私が死んで喜ぶことはあっても悲しむことはなかった。ずっとそうだったじゃない。
どうして今までと違ってくるの。