狂おしいほどに君を愛している
25.ノエル・オーガストは狂っている
レイクロード視点
ノエル・オーガストは狂っている。
俺と彼は腐れ縁だ。
俺の母がノエルの乳母をしていたので俺たちは所謂、乳兄弟だ。
ノエルは子供の頃から子供らしくない子供で、何を考えているのか全く分からなかった。
大人顔負けの頭脳を持っており、周囲の大人もそんなノエルを不気味がり、遠巻きにしていた。そんな大人の姿を見た子供だちもノエルに近づこうとはしなかった。
ノエル自身が人間を拒絶している節があった。
そんな彼が唯一、執着するものがある。
スカーレット・ブラッティーネ。
ブラッティーネ公爵家の妾腹でありながらオルガの心臓を持ってしまった可哀そうな令嬢だ。
萩色の髪に緑の目をした令嬢だ。
ブラッティーネ公爵がころっと騙されるのも分かるぐらい彼女は美しい容姿をしていた。きっと母親譲りなのだろう。
妾腹という立場から彼女がお茶会に出ることはなかった。周囲も彼女をお茶会に誘うことはしない。
そんなスカーレット・ブラッティーネとノエルがどうやって出会ったのかは未だに謎だ。
何度かノエルに聞いたけど教えてはくれなかった。
普段は無表情で、口を開けば毒舌ばかりの彼が唯一、感情を出すのは全てスカーレット・ブラッティーネ絡みだ。
ノエルの容姿も人外を超えているがスカーレット・ブラッティーネもそれに負けてはいないだろう。
俺はノエルで耐性がついているから平気だし、下手に彼女にちょっかいを出せば世にも恐ろしい目に合うと分かっているから手を出そうとも思わない。
とても強い目をしたのが印象的だった。
入学式でスカーレットを見つけた時のノエルは満面の笑みを浮かべて彼女の元に駆けて行った。まるで主人に会えた犬のようだ。
心なしかちぎれんばかりに振る犬の尾がノエルの尻から生えているような幻覚まで見えた。
俺はノエルの笑顔を見て鳥肌が立った。
あんな笑顔、見たことがない。周囲の令嬢たちが耐えきれずに失神していく。教師たちは大慌てで対処していくがノエルは全く気にしない。
折角なので俺も彼女に挨拶ぐらいはしておこうと心の中で教師陣に謝りながら二人の元に行った。
「‥…こえ」
自己紹介を終えた後、二人に聞こえないように俺は呟いた。
ただ名乗り合っただけなのにノエルからとんでもない殺気が俺に向けられた。普段は人に関心など示さないくせに。
どんだけ好きなんだよ。
こんな危ない奴にこんだけ執着されるなんて、スカーレットはノエルに一体何をしたのだろうか。
「スカーレット、これ記念にどうぞ」
えっ?マジで渡すの。その独占欲の塊みたいなプレゼント
「ありがとう。私、誰かにプレゼントを貰ったことがないの。嬉しいわ」
ノエルは純粋にスカーレットがプレゼントを貰った相手が自分だけだと知って喜んでいるようだけど俺は逆だ。
貴族の令嬢が、それも公爵家の人間が一度もプレゼントを貰ったことがないなんて本来ならあり得ないことだ。
誕生日などの記念日でもそうだし、理由がなくても社交辞令でプレゼントを貰うことだってある。
プレゼントを貰ったことがない。その言葉だけで彼女が公爵家からどんな扱いを受けて来たかある程度は想像がつく。
初めて貰ったのがこんな重たいものだなんて哀れだな。
ノエル・オーガストは狂っている。
俺と彼は腐れ縁だ。
俺の母がノエルの乳母をしていたので俺たちは所謂、乳兄弟だ。
ノエルは子供の頃から子供らしくない子供で、何を考えているのか全く分からなかった。
大人顔負けの頭脳を持っており、周囲の大人もそんなノエルを不気味がり、遠巻きにしていた。そんな大人の姿を見た子供だちもノエルに近づこうとはしなかった。
ノエル自身が人間を拒絶している節があった。
そんな彼が唯一、執着するものがある。
スカーレット・ブラッティーネ。
ブラッティーネ公爵家の妾腹でありながらオルガの心臓を持ってしまった可哀そうな令嬢だ。
萩色の髪に緑の目をした令嬢だ。
ブラッティーネ公爵がころっと騙されるのも分かるぐらい彼女は美しい容姿をしていた。きっと母親譲りなのだろう。
妾腹という立場から彼女がお茶会に出ることはなかった。周囲も彼女をお茶会に誘うことはしない。
そんなスカーレット・ブラッティーネとノエルがどうやって出会ったのかは未だに謎だ。
何度かノエルに聞いたけど教えてはくれなかった。
普段は無表情で、口を開けば毒舌ばかりの彼が唯一、感情を出すのは全てスカーレット・ブラッティーネ絡みだ。
ノエルの容姿も人外を超えているがスカーレット・ブラッティーネもそれに負けてはいないだろう。
俺はノエルで耐性がついているから平気だし、下手に彼女にちょっかいを出せば世にも恐ろしい目に合うと分かっているから手を出そうとも思わない。
とても強い目をしたのが印象的だった。
入学式でスカーレットを見つけた時のノエルは満面の笑みを浮かべて彼女の元に駆けて行った。まるで主人に会えた犬のようだ。
心なしかちぎれんばかりに振る犬の尾がノエルの尻から生えているような幻覚まで見えた。
俺はノエルの笑顔を見て鳥肌が立った。
あんな笑顔、見たことがない。周囲の令嬢たちが耐えきれずに失神していく。教師たちは大慌てで対処していくがノエルは全く気にしない。
折角なので俺も彼女に挨拶ぐらいはしておこうと心の中で教師陣に謝りながら二人の元に行った。
「‥…こえ」
自己紹介を終えた後、二人に聞こえないように俺は呟いた。
ただ名乗り合っただけなのにノエルからとんでもない殺気が俺に向けられた。普段は人に関心など示さないくせに。
どんだけ好きなんだよ。
こんな危ない奴にこんだけ執着されるなんて、スカーレットはノエルに一体何をしたのだろうか。
「スカーレット、これ記念にどうぞ」
えっ?マジで渡すの。その独占欲の塊みたいなプレゼント
「ありがとう。私、誰かにプレゼントを貰ったことがないの。嬉しいわ」
ノエルは純粋にスカーレットがプレゼントを貰った相手が自分だけだと知って喜んでいるようだけど俺は逆だ。
貴族の令嬢が、それも公爵家の人間が一度もプレゼントを貰ったことがないなんて本来ならあり得ないことだ。
誕生日などの記念日でもそうだし、理由がなくても社交辞令でプレゼントを貰うことだってある。
プレゼントを貰ったことがない。その言葉だけで彼女が公爵家からどんな扱いを受けて来たかある程度は想像がつく。
初めて貰ったのがこんな重たいものだなんて哀れだな。