狂おしいほどに君を愛している
45.欲しいのは‥…
「よぉ。スカーレット・ブラッティーネ公爵令嬢だな。堅苦しいのは好きじゃないんだ。スカーレットと呼ばせてもらうぜ」
気崩した騎士団の服。それにその口調。
王子というより下町のごろつきのような人だ。ただ、顔が整っているのでごろつきには見えないけど。
「エドウィン殿下、陛下よりエリザベート・バートリ元伯爵令嬢が執行した黒魔術の捜査に加わるよ命を受けました。ここから先は殿下の指示に従い行動させていただきます」
「おう。よろしく頼むわ。けど」
エドウィンは後ろにいるノエルに目を向けた。面白そうに笑ってはいるけど、探るような目をしている。
当然だろう。
この国の王子であるエドウィンならノエルの正体をも知っているはず。
自国の事件で起こった捜査に他国の王子が加わる。これは政治干渉に繋がる。下手をすれば越権行為で強制送還だって可能だ。
そうしないのはなぜか王が許可を出したから。
いったい王相手にどのような脅しをしたのやら。
私と彼の関係はどうあれ、エドウィンの立場ならノエルが何か企んでいて、その為に捜査に加わることを望んだと考えるだろう。
実際は私の為と私にエドウィンを近づけたくないという思いからでそこに政治的関与は一切ないんだけど。
つまりこの件は疑うだけ取り越し苦労になるのだ。
まぁ、そんなことをエドウィンに察しろだなんて無理な話だ。私もわざわざそんな訳の分からん行動理由を話してやるつもりもない。
「せっかく美人とデートなのに余計な虫がついて来るなんて興ざめだな」
「それはこちらのセリフです。婚約者を男と二人きりで行動させるわけないでしょう」
「は?」
「‥‥‥」
エドウィンが回答を求めるように視線を私に向けてきた。
「誰が誰の婚約者だって?」
「スカーレットは俺の婚約者ですよ」
エドウィンは額に手を当ててノエルの言ったことを一度整理する為に黙ってしまった。
「待て待て待て待て待て待て。待ってくれっ!あり得ないだろ、そんなこと。オルガの心臓だぞ。お前は他国の王子だ。しかも、海を挟んだ向こう側の王子だ。あり得ない。認められるはずがない」
エドウィンがオルガノ心臓を持ちだした時、一瞬だけノエルがとても冷たい目をエドウィンに向けた。
まるで恨んでいるような目だった。
何を?反応したのはエドウィンが『オルガの心臓』を口にした時。ならば恨みの対象はオルガの心臓?ううん。違う気がする。
それを口にした対象。
なぜ?
「スカーレットは公爵令嬢。身分的には釣り合いが取れていますよ。あり得ない話じゃない」
「身分の問題じゃない。陛下だって、公爵家だって」
「この国の王には既に許可を貰っています。公爵家の方は王から話が明日にでも行くでしょう。俺とスカーレットの婚約は王によって認められたもの。俺の国にも既に許可は貰っています。何も問題はありません。いい加減、オルガの心臓に固執するのは止めたらどうですか」
そうか。
ノエルはオルガの心臓を持った人間を自分たちの国の利益の為に利用されるのが嫌なんだ。
オルガの心臓は本来、オルガが愛する人を守る為に与えた物だから。決して権力者の道具にする為ではなかった。
エドウィンは皮肉的な笑みを浮かべてノエルを見る。
「その意見には俺も同意見だ。未知の力に頼っていてはこの国は何れ滅びの一途を辿るだろうと懸念していた。それで、お前は?お前たちの国はどうなんだ?ブラッティーネ公爵家の血を取りこむことで神の力を利用できると、打算がないと?」
「ないね。俺が欲しいのはスカーレットで、オルガの心臓じゃない。それに俺の家族にはオルガの心臓の話はしていない」
「それを信じろと?」
ノエルはエドウィンを鼻で笑った。
「あんたの信頼なんかどうでもいい。信じてもらう気なんて最初はなっからない」
他国の王子との関係が悪化してもおかしくないやり取りだ。
ノエルはそういうのを全く気にしていない。多分、一番王子という職業や外交に向いていない。
私は少しハラハラしながら成り行きを見守っていたけど鼻で笑われたエドウィンは「確かにな」と言って笑っていた。
気崩した騎士団の服。それにその口調。
王子というより下町のごろつきのような人だ。ただ、顔が整っているのでごろつきには見えないけど。
「エドウィン殿下、陛下よりエリザベート・バートリ元伯爵令嬢が執行した黒魔術の捜査に加わるよ命を受けました。ここから先は殿下の指示に従い行動させていただきます」
「おう。よろしく頼むわ。けど」
エドウィンは後ろにいるノエルに目を向けた。面白そうに笑ってはいるけど、探るような目をしている。
当然だろう。
この国の王子であるエドウィンならノエルの正体をも知っているはず。
自国の事件で起こった捜査に他国の王子が加わる。これは政治干渉に繋がる。下手をすれば越権行為で強制送還だって可能だ。
そうしないのはなぜか王が許可を出したから。
いったい王相手にどのような脅しをしたのやら。
私と彼の関係はどうあれ、エドウィンの立場ならノエルが何か企んでいて、その為に捜査に加わることを望んだと考えるだろう。
実際は私の為と私にエドウィンを近づけたくないという思いからでそこに政治的関与は一切ないんだけど。
つまりこの件は疑うだけ取り越し苦労になるのだ。
まぁ、そんなことをエドウィンに察しろだなんて無理な話だ。私もわざわざそんな訳の分からん行動理由を話してやるつもりもない。
「せっかく美人とデートなのに余計な虫がついて来るなんて興ざめだな」
「それはこちらのセリフです。婚約者を男と二人きりで行動させるわけないでしょう」
「は?」
「‥‥‥」
エドウィンが回答を求めるように視線を私に向けてきた。
「誰が誰の婚約者だって?」
「スカーレットは俺の婚約者ですよ」
エドウィンは額に手を当ててノエルの言ったことを一度整理する為に黙ってしまった。
「待て待て待て待て待て待て。待ってくれっ!あり得ないだろ、そんなこと。オルガの心臓だぞ。お前は他国の王子だ。しかも、海を挟んだ向こう側の王子だ。あり得ない。認められるはずがない」
エドウィンがオルガノ心臓を持ちだした時、一瞬だけノエルがとても冷たい目をエドウィンに向けた。
まるで恨んでいるような目だった。
何を?反応したのはエドウィンが『オルガの心臓』を口にした時。ならば恨みの対象はオルガの心臓?ううん。違う気がする。
それを口にした対象。
なぜ?
「スカーレットは公爵令嬢。身分的には釣り合いが取れていますよ。あり得ない話じゃない」
「身分の問題じゃない。陛下だって、公爵家だって」
「この国の王には既に許可を貰っています。公爵家の方は王から話が明日にでも行くでしょう。俺とスカーレットの婚約は王によって認められたもの。俺の国にも既に許可は貰っています。何も問題はありません。いい加減、オルガの心臓に固執するのは止めたらどうですか」
そうか。
ノエルはオルガの心臓を持った人間を自分たちの国の利益の為に利用されるのが嫌なんだ。
オルガの心臓は本来、オルガが愛する人を守る為に与えた物だから。決して権力者の道具にする為ではなかった。
エドウィンは皮肉的な笑みを浮かべてノエルを見る。
「その意見には俺も同意見だ。未知の力に頼っていてはこの国は何れ滅びの一途を辿るだろうと懸念していた。それで、お前は?お前たちの国はどうなんだ?ブラッティーネ公爵家の血を取りこむことで神の力を利用できると、打算がないと?」
「ないね。俺が欲しいのはスカーレットで、オルガの心臓じゃない。それに俺の家族にはオルガの心臓の話はしていない」
「それを信じろと?」
ノエルはエドウィンを鼻で笑った。
「あんたの信頼なんかどうでもいい。信じてもらう気なんて最初はなっからない」
他国の王子との関係が悪化してもおかしくないやり取りだ。
ノエルはそういうのを全く気にしていない。多分、一番王子という職業や外交に向いていない。
私は少しハラハラしながら成り行きを見守っていたけど鼻で笑われたエドウィンは「確かにな」と言って笑っていた。