分岐点  ~幸せになるために

私は 仕事が 一段落して。

持ち出した資料を キャビネットに 片付け始めた。


「終わりそう?」

毅彦に 声を掛けられて。

ファイルを 何冊も 持ったまま 振り返る。


「はい。なんとか…」

不自然な体勢で 体をひねったから。

腕の中で 重ねたファイルが 崩れて。


「あっ!」

落ちるファイルを 防ごうとして 毅彦が 駆け寄る。


「あっ。ああっ…」

走り寄った 毅彦は 腕で 数冊のファイルを 受け止めて。


バランスを 崩した私は 毅彦の足元に 跪く。


「大丈夫?」

「はい…すみません。」

「無茶するなぁ。一度に 運ぼうなんて。」

「はい…面倒だったから…」


クスッと 笑った毅彦は 私の腕を掴み。

立ち上がった私は 何故か 毅彦の胸に 抱き締められていた。



『あっ!』


何が どうなって こんなことに なったのか。

私だけじゃなく 毅彦も 驚いたと思う。


そのまま そっと 離れれば よかったのに。


私は 一瞬 毅彦の目を 見つめてしまった。


不意に 熱い瞳が 交差して…


私達は そのまま 唇を合わせていた。






< 12 / 85 >

この作品をシェア

pagetop