分岐点  ~幸せになるために

どのくらいの時間 そうしていたのか。

長かったようにも 短かったようにも 思うけど。


ハッとして 体を離したのは 私。


「食事に行こうか…?」


毅彦は 私の肩を そっと 両手で包んで。

私は じっと 毅彦を 見つめたまま 頷いた。



私 大変なこと しちゃった…?

ううん… たいしたことじゃないよ。


これは 事故みたいなもの。

倒れた拍子に 唇が触れただけ。


ただ それだけのこと…


私達は お互いに 何とも 思ってないんだから。


夢中で 自分に 言い聞かせて。

デスクを 片付けて。




抱き締められた時…

毅彦の Yシャツから

ほのかに 柔軟剤の香りがした。


幸せな家庭を 感じさせる匂い。

わかっていたけど… わかっているのに。



毅彦と並んで オフィスを出る時

もう私は 朝の私では なかった。





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