分岐点 ~幸せになるために
3
「人が多いなぁ…」
毅彦は 振り返って 後ろを歩く私を見る。
「はい… 土曜日だから。」
少し 俯きながら歩いていた私は 顔を上げて 毅彦を見る。
昨日まで… ううん、ついさっきまで ただの上司だった人。
好意も 恋愛感情も 全く 無かったのに。
多分 毅彦も 同じだと思う。
それなのに 歩きながら 目を合わせると
妙に 甘くて 切なくなってしまう。
どうして…?
たった一度の キスで こんなに 変わってしまうの?
私達 これから どうするのだろう…?
「何か 食べたい物 ある?」
駅までの道を 歩きながら 毅彦に聞かれて。
「何でもいいです。」
だいたい 食事する気分じゃないし。
胸が ドキドキしていて
何も 食べられそうにない…
さっきまで お腹が空いていたのに。
何を食べて 帰ろうか 考えながら 仕事していたのに。
これからのことが 気になって。
落ち着いて 食事する気分じゃない。
「じゃ ここでいい?」
毅彦は 駅近くの 小さなレストランで 足を止める。
私も 何度か 入ったことがある ハンバーグの美味しいお店。
「はい…」
扉を押す 毅彦に 一歩遅れて 店内に入って。
まもなく2時なのに 土曜の店内は 中々の混雑ぶり。
「何 食べようか…?」
案内された 奥のテーブルに
私達は 向かい合って 腰を下ろした。