分岐点 ~幸せになるために
金曜の夜 ホテルを予約しようとした 毅彦に
「もし よかったら 私の部屋に来る?」
「沙耶香の部屋? 行ってもいいの?」
「うん。どうせ1人だし。ホテルより 落ち着くでしょう?」
私は 毅彦に 負担をかけたくなかったし。
毅彦を 部屋に招くことで
2人の関係を 日常にしたかった。
先に帰った私は 料理を作って 毅彦を待つ。
8時少し前 『もうすぐ 駅に着くよ』と ラインが来て。
私は 部屋を出て 駅に向かう。
「お疲れ様。」
改札から 出てくる毅彦は 笑顔で。
駆け寄った 私の肩を そっと抱く。
「寒かっただろ?」
「大丈夫。ご飯 作ったよ。」」
「本当? じゃ ケーキ 買って行こうか?」
毅彦は 商店街の ケーキ屋さんに 入って行く。
「どれがいいかな… 沙耶香は?」
「うーん。レアチーズかな。」
閉店前の ショーウィンドウは 残り少なくて。
それでも 2人で あれこれ選んで。
初めて 恋人を 部屋に招く高揚は
毅彦に 家族がいることを 忘れさせてしまう。
ううん… 忘れたふりをしているだけ。
本当は 全部 わかっているけど。
今だけ 錯覚しても いいよね?
私達は 普通の恋人同士だって。