分岐点 ~幸せになるために
海辺のフェンスに 並んで寄り掛かって。
遠くに見える 景色に 目を凝らして。
「毅彦さんって 実家も東京なの?」
「そうだよ?」
「じゃ 結婚するまで 実家に住んでたの?」
「うん。俺も 沙耶香みたいに 一人暮らしが したかったなぁ。」
「えーっ。大変だよ? 家賃もかかるし。」
「そうだね。ウチの会社の給料で。沙耶香 偉いなぁ。」
「フフッ。それは 毅彦さんも 同じじゃない…?」
「いや、俺は 妻も働いているからさ。」
「でも 生活費が 違うでしょう?」
「うーん。全部 2倍ってわけじゃないから。1人より 楽じゃない?」
「嬉しいことは 2倍。悲しいことは 半分…」
「んっ? 何それ?」
「よく 結婚式で 言うじゃない?」
「そうかなぁ… 結婚しても 共有できない部分って あるから。」
それでも 毅彦は 奥さんを 結婚相手に 選んだ。
あまり自己主張をしない 毅彦なのに。
人生の パートナーとして…
「毅彦さん。奥さんのこと 大切にしている?」
今まで 私からは あまり話題にしなかったけど。
「普通じゃない? 可もなく不可もなく…?」
毅彦は 奥さんに 不満があるわけじゃない。
「子供は? 娘さんは 可愛い?」
「可愛いよ。責任重大だし。」
それなら 私といる時間を 娘さんと 過ごした方がいいよ。
娘さんが 悲しむことをしたら いけないよ。
でも私からは 言わない。
毅彦に 家庭を壊す意思が ないことを 知っていても。
まだ私は 言うことは できない。
もう少し 毅彦と 一緒にいたいから。