分岐点 ~幸せになるために
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頼太から 連絡が来たのは 2月半ば。
私は 頼太のことも 連絡先を交換したことも 忘れていた。
「沙耶香さん… 今 電話 大丈夫ですか?」
「うん。大丈夫だよ。頼太 どうしたの?」
頼太は ” 何かあった時のために ”って 言っていたから。
「いや… 食事でも どうかなって思って。」
「そうだね。いいよ。頼太 いつがいいの?」
そう言えば 私は ” 食事でもしよう ”って 言った。
「あっ。俺は 金曜なら 定時で上がれるんだけど。沙耶香さん、先約ありますか?」
「私も 金曜で大丈夫だよ。」
少し 緊張したような 頼太の声を
微笑ましく思う私は 姉の気分だった。
たとえ 近くに住んでいても
友達のお姉さんを 食事に誘うって。
その不自然さに 気付かないくらい
私にとって 頼太は 弟みたいな存在だった。