分岐点  ~幸せになるために

頼太が 初めて 私の部屋に泊まったのは GWに入ってから。


その日も いつものように 一緒に食事をして。

私の部屋まで 送ってくれた頼太。


「寄っていく?」

「いいの?」


大切にされていることは わかるけど。

何もしない頼太が 歯痒くて。


私の言葉に 頼太は 少し驚いた顔で 頷いた。


「コーヒー 淹れるわ。座っていて。」

「うん。」


私の部屋に 入ると 頼太は 落ち着きなく 部屋を見回す。


「沙耶香 綺麗にしてるなぁ。」

「そんなことないよ。」


「女の子の部屋って感じ。」

「ウフッ。女の子って…?」


立ったまま 部屋の中を 見ていた頼太。

キッチンに立つ私を 後ろから 抱き締めた。


「…っん? 頼太…?」


壊れ物を 抱くような 優しい腕は

徐々に 力が込められて。


柔らかく 私を 包み込む腕の中

身体を 回転させて 頼太の方を向くと

頼太は 私の顔を上げて キスをした。


丁寧に… 優しく……





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