黒い花
始まり



始まりは幸せだったはず。

お父さんにお母さん、色んな人たちに囲まれて。



─────あの日、までは。


「…君、ひとり?」

小さな体に見合わない大きな傘を持った男の子が、雨の中小さくうずくまっている少女に話しかける。

「………だれ…?」

男の子は優しく微笑む。

「こわかったね。もう、大丈夫。

僕は×××─────」

それが、私の覚えている最後の記憶。

最後の光の存在。



──それから数年。

同じような状況の中で、私はこの人と出会った。

「…おいで。寒かっただろう。」

何も映さない、何も言わない私を優しく抱き上げる漆黒。

そこから私は変わり、運命に囚われている──


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