黒い花
「こーんな面倒くさそうな場所だとはなぁ。これ以上車では進めないから、ボクはここまでだ。」
他人事のようにそう言うムヨ。
ここでムヨと別れたら……
本当に闇の世界と暫く関係がなくなる。
そう考えるとどこか引き返したくなる気がして、今は花城あまねなんだからと気を取り直す。
「…ムヨ、ありがとう。」
送ってくれた彼に改めてお礼を言い、目の前に広がる森を見つめる。
何だか表の世界なのに、戦場に向かう心持ちだ。
でも、もう引き返せないから────
「そんじゃ、花城あまねサン?頑張ってきてね〜」
可笑しそうに私の偽名を呼び、最後まで変わらずおチャラけた様子で手を振るムヨ。
私はそれを振り返ることなく、いよいよ表世界への一歩を踏み出した。