黒い花
金色の達筆な文字で"矢白高校"と刻まれた看板を掲げる真っ白な校舎。
汚れが目立つ白色な筈なのに、むしろ光り輝いて見えて思わず後ろに下がりたくなる。
門はお城への入り口のように"ギギギッ"とした鈍い音を立てて開きそうなほど重そうで大きい。
…そしてそのご立派な門はピタリと閉められている。
───これじゃ、どうやって入れというんだ。
私なら飛び越えることはできるけど、監視カメラとかもあるかもしれないし、私の素性が疑われる目立った行動はとりたくない。
と言うか、現にここまで来るのも一苦労で、迷って辿り着けない可能性だって十分にあった。
そう考えたら…
「…歓迎されてないのかな。」
おもむろにそんなことを思った。
───瞬間。不意に今まで無かった自分以外の気配がした。
「…お前、こんな所で何してる。」
…………!?
低く少し唸るような口調。
それは一瞬にして私の背後に移動し、その瞬間の気配を消していた。