黒い花
…っこいつ、何者………?
私は内心で十分に警戒しながら平常を装い振り返ると…
───黒い瞳……
私と似た深い黒色の瞳と目が合い、咄嗟に少しだけ目を見開いてしまった。
…彼は恐らくここ矢白高校の生徒と思わしき人物で、驚くほどに端正な整った顔立ちをしている。
けれど、私が何より驚いたのはその見た目ではなく……彼の気配の無さ。
今までは周りに全く気配が無かったのに、この人は気が付いたら私の真後ろに立っていた。
私は気を緩めていたつもりはない。
むしろ、静かすぎるくらいだから、周りの様子を探っていた。
なのに、だ。
…私は彼に背後を取られた。
しかも────
彼からはただの生徒なら出せる筈もない"殺気に似た圧"を僅かに感じられる。
…普通の人なら感じられない微々たるものではあるが、私を普通の女子高生とみなせば少し脅かすくらいの要素はある。
実に微妙なライン。