黒い花
……私の中に、ある確証が生まれた。
───彼は絶対に"それ"を狙ってその気配と殺気を操っている。
それは、私が裏社会で生きてきて、実際に私にも出来ることだから言えることだ。
そしてそれは……彼も"こちら側"に近い世界で生きてきたことを意味する。
だってこんなこと、相当訓練して実践しなければ身につかないもの。
「おい、聞いているのか。」
再び低く重い言葉が発せられ、私は目の前のヤツを放置していたことを思い出す。
…私らしくもない。こんな人に気を取られるなんて。
内心で大きな溜め息をついて彼の質問に答えることにした。
「…こんな所で何してる。でしたっけ。」
私は一度俯いてから顔を上げた。
「私、今日ここに転校してきたんです。でも、入り方が分からなかったもので…」
少し困った風に眉を寄せ、真っ黒な瞳を見つめ返す。
まるで、何も分からない"ただの女子高生"のように。
すると、今度は彼が少し目を見開き、私の僅かな違いに反応を見せた。