黒い花



「おいで」

優しげな笑みを浮かべ、私の額に接吻するライ様。

眼差しは熱く、その手つきはまるで、とても大切なものを扱うように壊さないようにと感じられる。

そこに私の心は無くても、ライ様は私を愛してくれている。
特別に想ってくれる。

そして記憶の代わりに*クロネ*という名を。
失われた心に"仕事"をくれた。

私の空いてしまった部分を埋めてくれた。

…この人こそが、私の全て。

だから私は今日も明日も明後日も、この人に尽くし生かされる。そんな日々を送っていくのだろう。



……そう、この時の私は当たり前に思っていた。


< 3 / 46 >

この作品をシェア

pagetop