黒い花



「…あぁ"クロネ"と呼んだが、これは仕事とは違う。言うなれば…一種の試練になるかな。」

仕事じゃ、ない…?

「クロネ…いや、"白斗みつね"。
君は…



自分自身のことを知りたい?」


────……え…
心臓がドクンと鳴った。

自分自身のこと……すなわち、私の失った記憶について知れるってこと…?

なんで、なんで急にこんなことを…

私は初めて、ライ様の言葉に疑問と動揺を抱いた。

思えば空っぽになってから今まで、そんな風に心が動いたことはなくて。


…そう。初めて人を殺した時さえも────


自分自身のこと。
「知りたい」と思うと同時に「知らなくていい」と思う自分もいる。


< 8 / 46 >

この作品をシェア

pagetop