黒い花
「…あぁ"クロネ"と呼んだが、これは仕事とは違う。言うなれば…一種の試練になるかな。」
仕事じゃ、ない…?
「クロネ…いや、"白斗みつね"。
君は…
自分自身のことを知りたい?」
────……え…
心臓がドクンと鳴った。
自分自身のこと……すなわち、私の失った記憶について知れるってこと…?
なんで、なんで急にこんなことを…
私は初めて、ライ様の言葉に疑問と動揺を抱いた。
思えば空っぽになってから今まで、そんな風に心が動いたことはなくて。
…そう。初めて人を殺した時さえも────
自分自身のこと。
「知りたい」と思うと同時に「知らなくていい」と思う自分もいる。